新機能紹介シリーズ Alteryx Designer 2022.3
2022年11月29日にAlteryxDesignerの2022.3バージョンがリリースされました。
半年ぶりのアップデートである今回は、いくつかのツールで便利なアップデートが入っているのと(特に、ファジーマッチツールはようやく日本語対応しました)、インテリジェンススイートにも新ツールや既存ツールへの追加機能などされています。また、AMP関連も大きく手が入っています。
DesignerとServerの互換性について
以前よりもバージョン間の互換性が厳しくなっています。Designerを2022.3にすると、古いServerにはワークフローを保存できません。管理者UIもしくはAPIを介してServerにワークフローを保存する必要があります。これは、2022.3では暗号化処理にアップデートが入っているためです。
Serverをご利用の方は、Server2022.3のアップデートと合わせるように願います(もしくはNonAdminバージョンで機能を試しましょう)。
詳細について紹介していきます。
バージョンアップ概要
- インストーラーの更新
- AMP Engine改善
- AMPツールサポート
- プロキシサポート
- エンジンパリティユーティリティ
- ツールアップデート
- データ出力ツール
- セレクトツール(及び同機能保持ツールすべて)
- フォーミュラツール
- ファジーマッチツール
- インテリジェンススイートアップデート
- 新規ツール
- ゼロショットテキスト分類
- テキストサマリー
- アップデート
- PDFからテキストツール
- 画像処理
- 画像テンプレートツール
- 画像認識ツール
- 新規ツール
- マルチアンカーキャッシング
- 結果グリッドのアクセシビリティの更新
- ワークフローの拡張機能の比較
- DCM外部保管庫
- マップに更新を表示
- マルチバイト文字のサポート改善
- その他機能バージョンアップ
- 新しい「ここからスタート」
- 使用状況データの設定
- ピア検証の許可リストを有効にするグローバル設定
- OpenSSL3 暗号化モジュールの更新
- Google BigQuery バルクローダー
- Google BigQuery In-DBサポート
- Azure ADのSnowflakeサポート
- Azure ADのDatabricksのサポート
- 行動分析ツール廃止
- コネクタの廃止
バージョンアップ 個別解説
インストーラーの更新
インストーラーが更新されました。
インストーラーを起動すると、今インストールされているプロダクトを検知するようになっています。
これにより、OSの言語を自動検知し、対応する言語の製品をインストールします。強制的に言語を指定したい場合は、コマンドラインオプションでの指定 が必要かもしれません(未検証)。
AMP Engineの改善
今回AMP Engineも様々なアップデートが入っております。
AMPツールサポート
現在、リリースノートによると、166個のツールが完全にサポートされており、11個のツールが部分的にサポートされています。今回、インサイトツール以外のレポートツールとRベースのツールがAMP対応となりました。
今後、2023年には86のAMPツールがサポート予定となっているようです。
なお、一部のコネクタはAMP専用となっているため、従来エンジンでは動作しないようです。
- Azure Data Lakeファイル入力/出力
- Microsoft Power BI出力
- One Drive 入力/出力
- SharePoint入力/出力
プロキシサポート
- プロキシ経由でのネットワークのサポートがAMPに追加
- HTTPプロキシ経由のsFTPサポート(旧エンジン、AMP両方)
- プロキシのバイパス機能(旧エンジン、AMP両方)
- [ユーザ設定]と[システム設定]でプロキシプロトコルタイプ(HTTPもしくはSocks5h)を指定可能になった
なお、プロトコルを指定しない場合はHTTPがデフォルトです
ユーザー設定:
システム設定:
エンジンパリティユーティリティ
AMPエンジンの結果と旧エンジンの結果を比較できるツールがリリースされました。旧エンジンとAMPエンジンではデータの処理の順番等が変わっており、ソートなど明示的に行わないと結果がずれる場合があります。エンジン互換モードを使うことでデータ順序の問題は解決されますが、片方のエンジンのみで発生するバグがまったくないわけではありません。安心してAMPエンジンに移行できるように今回のツールは非常に利用価値があるかと思います。
ツールは、Galleryにて公開されておりますので、そちら よりダウンロードください。
ツールアップデート
データ出力ツール
データ出力ツールに「ツールを無効化する」オプションが追加されました。これまですべてのデータ出力ツールを無効化するオプションはありましたが、一部のみ無効化はできませんでした。そのため、一部のデータ出力ツールを無効化する場合、わざわざコンテナツールに格納してから無効化していましたが、今回のバージョンからツール単体で無効化できるようになっています。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
セレクトツール(及び同機能保持ツールすべて)
セレクトツールに検索ボックスが追加されました。これにより効率的にフィールドを見つけることができます。また、表示しているフィールドすべてのチェックをつけたり外したりできるオプションも追加されました。これにより非常に効率的な運用が可能となります。この機能はセレクトツールだけではなく、同様の機能を持つツール(結合、複数結合、フィールド付加、セレクトIn-DB、最寄り検索、空間マッチ)すべてで利用できます。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
フォーミュラツール
フォーミュラツールにて、複数数式がある場合に一度にまとめて展開する機能が追加されました。また、各数式にIDがつくようになりました。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
ファジーマッチツール
とうとう日本語に対応しました。日本語を考慮した定義済みの一致スタイルを、住所、名前、テキストに適用できるようになりました。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
インテリジェンススイートアップデート
今回インテリジェンススイートのテキストマイニングにかなりのアップデート、新機能追加が行われています。
新規ツール
テキストマイニングカテゴリーに2つのツールが追加されました。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
Zero-shotテキスト分類
トレーニングデータなしで選択したカテゴリにテキストを分類します。現時点では英語のみの対応となります。
例えば以下のようなインプットがあるとします。
さらにラベルとして以下のようなデータを指定します。
これにより、以下のようにラベリングされます(学習は必要ありません)。
テキストサマリー
TextRank 手法に基づいて、テキストの概要を抽出します。要約の長さをセンテンスの数で指定できます。
使用しているのは「Summa - Textrank」というパッケージのようです。残念ながら、現時点では日本語は未対応です(対応言語:English, French, German, Italian, Portuguese, Spanish)。
例えば、入力が以下の様なものだとします(サンプルのワークフローのデータです)。ちなみに、途中までしか表示できていません。
これを3行で要約すると以下のようになります。
アップデート
アップデートは、コンピュタービジョンカテゴリのツールで数多く行われています。
PDFからテキストツール
文字としてエンコードされたテキストを99%以上の精度でPDFから直接抽出できるようになりました。
画像処理ツール
画像処理ツールに「シフト」機能が追加されました。スキャンした画像の位置がずれているような場合に効果を発揮します。なお、シフト機能は画像テンプレートツールで指定したアンカーをベースに認識するようになっています。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
画像テンプレートツール
画像テンプレートツールにて、アノテーションのバウンディングボックスを編集する機能が追加されました。つまり、一度設定した後でも以下のように表示されボックスの大きさや位置を変更することが可能です。
画像認識ツール
新しい出力アンカーが追加され、評価基準とモデルレポートが確認できるようになりました。これにより、モデルを十分にトレーニングできたかどうかが確認できます。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
評価基準出力:各分類ラベルの適合率、再現率、正解率
※epoch2までを表示
モデルレポート出力:各エポックの損失、正解率プロット
つまり、これまで以下のように結果ウィンドウに表示されていた内容がグラフやデータとして出るようになった、ということになります。
マルチアンカーキャッシング
2018.3でリリースされたキャッシュ実行機能が大幅にパワーアップしました。
2022.1までは、2つの条件でキャッシュ実行ができませんでした。
- 複数の出力を持つツール
- 円の中にあるツール
この条件が今回のアップデートにより撤廃され、50以上のツールでキャッシュ実行ができるようになったようです。
なお、出力アンカーが5個を超えるツールやIn-DBツールなどはまだキャッシュできない場合があるようです。
結果グリッドのアクセシビリティの更新
結果ウィンドウのグリッドのUIが更新され、スクリーンリーダーやその他の支援技術を使用してアクセシビリティを向上させたようです(未検証)。ボタンとコントロールは常に表示されるようになっています。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
ワークフローの拡張機能の比較
2022.1でワークフローの比較機能が実装されていますが、コンテナツールを含む場合に、有効と無効の状態が異なる場合は異なるワークフローとして認識されるようになりました(ワークフロー比較機能は、[オプション]-[詳細オプション]-[ワークフローの比較]から利用できます)。
2022.3の比較結果:
DCM外部保管庫(DCM External Vault)
DCM(データ接続マネージャー)の資格情報を保管庫に保存する機能です。これにより、安全に資格情報を利用することができます。詳細は「DCM外部保管庫 」を御覧ください。
マップに更新を表示
地図にマップボックスのロゴと属性テキストが表示されるようになっています。
マルチバイト文字のサポート改善
リリースノートによりますと、
マルチバイト文字、特に日本語データで一般的な文字のサポートを改善しました。
とのことですが、詳細は不明です。
新しい「ここからスタート」
今まではワークフロー内で開いていましたが、独自のウィンドウで開くようになりました。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
その他アップデート
使用状況データの設定
Designerのユーザー設定の[既定値]タブにある「カスタマー体験改善プログラムのための使用状況データを送信」オプションが削除されました。これについてのAlteryx社ポリシーについては、「使用データによる製品の改善 」および「Alteryx プライバシーポリシー 」を参照願います。
2022.3:(新バージョン)
2022.1:(旧バージョン)
まぁ、元々2022.1でもチェックをオフにできなかったのですが・・・。
ピア検証の許可リストを有効にするグローバル設定
非 FIPS Designer バージョンの管理者は、問題のあるホストのリストをフラットファイルで指定して、ピア検証をスキップできるようになりました。証明書の認証に問題が発生した場合でも、ユーザーの作業を停止する必要はありません。
OpenSSL3 暗号化モジュールの更新
※日本語のRelease notesに未記載(2022/11/30時点)
OpenSSL3暗号化エンジンがOpenSSL 3.0.7に更新されています。これにより、OpenSSLの脆弱性CVE-3602、3786に対応しています。
また、OpenSSLレガシープロバイダをバンドルしています。3.xシリーズが提供していない古いアルゴリズムと暗号化エンジン(MD2、MD4、RC4、DES、IDEA他)を提供します。ただし、レガシープロバイダは手動でロードするまでは機能しません。
Google BigQuery バルクローダー
データ出力ツールにて、Google BigQueryへの一括読み込みができるようになりました。DCMを使用したOAuth認証でサポートされます。また、データのステージングはGoogle Cloud Strageで行われます。
Google BigQuery の In-DB サポート
In-DBツールにて、Google BigQueryがサポートされるようになりました。また、ストリーミングデータの一括読み込みがサポートされています。
※日本語のリリースノートには逆のことが書いています(2022/11/30)
E メールツール OAuth サポート
DCMを利用したOAuth認証にてMicrosoft Exchange onlineに認証し、Exchange Onlineアカウントから電子メールを送付できるトークンペアを取得できるようになりました。詳細はEメールツール を御覧ください。
※2022/11/30時点では、英語のEメールツールのサイトのみ更新されています。
Azure ADのSnowflake サポート
DCMを介したOAuth認証にてSnowflakeデータにアクセスし管理できるようになりました。詳細は「Snowflake Azure AD 認証 」。
※2022/11/30時点ではアクセスできませんでした
Azure ADのDatabricksのサポート
DCMを介したOAuth認証にてDatabricksデータにアクセスし管理できるようになりました。詳細は「Databricks Azure OAuth 認証 」。
行動分析ツール廃止
Alteryx Designer の行動分析ツールは廃止されました。これらのツールは、引き続き US Business Insights Data Packages 2021 Q4 およびそれ以前のバージョンで動作します。
ということで、行動分析ツールが廃止されています。ツールパレットにて右クリックし、「廃止予定のツールを表示」で以下のように廃止扱いとして表示されます。
コネクタの廃止
以下のコネクタが廃止されました。
- Dynamics CRM の入力および出力
- Google スプレッドシートの入力および出力
- Tableau Serverにパブリッシュ
- Salesforce Einstein 分析出力
- SalesforceWave出力
- SharePoint リスト入力および出力
※Alteryx Designer 2022.3.1.395時点の情報です