Alteryxの新ライセンス体系「Alteryx One」について

Alteryxの新ライセンス体系について

 

2025/5/12~15に開催されたAlteryx社の年次イベント「Inspire 2025」にて、新ライセンス体系「Alteryx One」が発表されました。

今回はこの内容について、公開されているドキュメントを元にまとめてみました。

新ライセンス体系「Alteryx One」概要

新ライセンス体系「Alteryx One」は、Alteryx社が提供してきた製品をプラットフォームとして提供するもの、となります(つまり、個々の製品ベースだったものを再構築したということです)。

特徴としては、これまで各製品ごとにライセンシングされていたものが、スターター、プロフェッショナル、エンタープライズという3種類のカテゴリ(これをエディションと読んでいます)で契約するということになります。つまり、それぞれのエディションごとに、使える製品が決まっている、という形になっています。

 

それぞれ、上の図に記載した単位のチームに適しています。各エディションについてもう少し詳しく見ていきましょう。

 

  • スターターエディション

スターターエディションは、基本的なデータ準備、ブレンディングができる小規模チーム向けのエントリーレベルのパッケージとなっています。ExcelCSVなどのフラットファイルに対して基本的なデータ加工、集計をDesigner Cloudを用いて行うことができます。

スターターエディションは小規模チーム向けのため、10名までの利用に制限されています(10名を超える場合はプロフェッショナルプランの契約が必要になります)。使用できる製品はDesigner Cloudのみです。

 

  • プロフェッショナルディション

プロフェッショナルエディションは、高度なデータ準備・分析、ブレンディングが可能なプロフェッショナル向けパッケージです。Designer CloudおよびDesigner Desktopを用いた本格的なデータ分析が可能で、さらにAIが自動的にインサイトを発見しレポート化するAuto Insightsも利用可能です。プロフェッショナルエディションの場合、ユーザーの役割に応じたユーザーロールとして、フルもしくはベーシックが規定されており、それぞれ利用できる機能が異なります。

なお、プロフェッショナルエディション(エンタープライズエディションも同様です)にはクラウド展開版とハイブリッド展開版があります。

 

  • エンタープライズエディション

エンタープライズエディションはプロエディションまでの機能に加え、ガバナンスを備えたプラットフォームを利用でき、ワークフロー実行の自動化まで行うことができるエンタープライズレベルのパッケージです。エンタープライズエディションでは、結果のみを利用したい方のためのユーザーロール「ビューワー」を利用することが可能です。これはクラウド・オンプレミス環境で、すでに作られているワークフローを実行するような使い方を想定しています。

 

エディションごとの差異を概要レベルでまとめると、以下のようになります。「◯」は利用可能、ということになります。

 

機能 スターター

エディション

プロフェッショナル

エディション

エンタープライズ

エディション

標準的なデータソース
高度なデータソース
ワークフロー作成(クラウド) 基本機能のみ
ワークフロー作成(オンプレミス)
Copilot(オンプレミス)
分析アプリ オンプレミスのみ
AIレポーティング
オーケストレーション実行
スケジュール実行
AIビルダー オプション オプション
データパッケージ オプション オプション

 

次に、上の表の各機能について個別に見ていきたいと思います。

各機能を使うための製品について

Alteryx Oneでは、目的別に開発された製品を使うことで、上で紹介した各機能を利用することができます。ここでは代表的な機能をどの製品で利用可能か、ということについてご紹介します。

ワークフロー作成・実行

ワークフロー作成・実行は、Alteryxのプラットフォームの中で中核となる機能です。ワークフローの作成・実行は、Designerと呼ばれるアプリで行います。全エディションで共通的に利用できるのはクラウド環境で提供される「Designer Cloud」です。さらにプロフェッショナルとエンタープライズエディションではオンプレミスで提供される「Designer Desktop」も利用可能です。Designer Desktopでは、AIがワークフローを作成するアシストをしてくれるCopilotも利用可能です。

利用可能製品:

  • Designer Cloud(クラウド)
  • Designer Desktop(オンプレミス)
  • AI Copilot(オンプレミス)

 

分析アプリ

分析アプリは、実行するたびにパラメータを一部変えて実行して、ほしい結果を得るようなタスクのある場合に活躍する機能で、ワークフロー自体を編集せずUIを表示し、UI上でパラメータを変更してワークフローを実行できる機能です。これはプロフェッショナルおよびエンタープライズエディションのDesignerで可能です。オンプレミスではDesigner Desktopの1機能として利用可能ですが、クラウド上でこれを行いたい場合は、App Builderというクラウド上のアプリでの作り込みを追加で行う必要があります。App Builderについてはエンタープライズエディションのみでの提供となります。

  • Designer Desktop(オンプレミス)
  • App Builder(クラウド)

オンプレミスで作成した分析アプリも、AppBuilderと組み合わせればクラウド環境で利用することが可能です。

 

スケジュール実行

エンタープライズエディションではワークフローのスケジュール実行が可能です。オンプレミスのDesignerで作成したワークフローは、オンプレミス環境ではAlteryx Serverでスケジュール実行が可能です。クラウド環境ではDesigner Cloud、オンプレミスのDesigner Desktopで作成したワークフローはいずれもスケジュール実行が可能ですが、オンプレミスのDesignerで作成したワークフローは、Cloud Execution for Desktopというアプリ上で動作します。

また、このスケジュール機能とPLANsで作成したオーケストレーション機能を利用すると、より高度な複数のワークフローの実行制御がクラウド上で可能となります。

  • Alteryx Server(オンプレミス)
  • Schedule(クラウド)
  • Cloud Execution for Desktop(クラウド)※オンプレのワークフローをクラウドで実行する機能

 

AIレポート

Auto Insightsを使えば、データからAIがインサイトを発見し、自動的にレポートを作成することができます。Auto Insights内にはさらにMagic Reportという高度なレポート作成機能があり、プロフェッショナルエディション以上でAIレポートの機能を利用することが可能です。

  • Auto Insights(クラウド)

 

AIビルダー

AIビルダーは、機械学習モデルを自動的に作成したり、LLMなどのAIを利用する機能です。こちらは、インテリジェンススイート、GenAIツールというオプションの形で利用することができます。

インテリジェンススイートの場合、オンプレミスでは、Designer Desktopの追加ツール、クラウド上ではMACHINE LEARNINGというアプリ上で行います。本機能については、オンプレミスとクラウドで大きな機能差があるため、導入する場合は事前に調査することをおすすめします。

  • Intelligence Suite(オンプレミス)
  • GenAIツール(オンプレミス)
  • MACHINE LEARNING(クラウド)

 

なお、データパッケージについては現在日本で提供されていないためここでの紹介は割愛します。

 

ユーザーロールについて

ユーザーロールは、各エディションに含まれた機能へのアクセス権限を定めたものです。ユーザーは各ユーザーに割り当てられたユーザーロールによって利用できる機能が決まります。

 

  • ベーシックユーザー

基本的な機能が使えるユーザーです。プロフェッショナル、エンタープライズエディションで利用可能なロールです。準備およびブレンディング用ツールとデータ接続が利用可能で、利用機能は限定的になります。アドオンは利用できません。

 

  • フルユーザー

各エディションで提供されているほぼすべての機能が利用できるのがフルユーザーです。すべてのエディションで利用可能ですが、スターターエディションもフルユーザーというロールですが、利用可能な製品が少ないため、プロフェッショナルエディションと同等ではありません。

 

  • ビューワー

エンタープライズエディションのみで利用可能なユーザーロールで、無制限の数のユーザーを割り当て可能です。このユーザーは、閲覧(および実行)が可能なロールで、Designerで作成したワークフローの閲覧、実行、Auto Insightsで作成したレポートの表示、分析アプリの実行が可能です。

 

それぞれのユーザーロールで利用可能な機能は、それぞれのエディションごとに確認する必要がありますが、既存製品をご存知の方向けに記載すると、おおよそベーシックはDesigner Cloud相当(DesktopおよびCloud)、フルユーザーはDesigner Desktop相当のことができる、と考えてください。

 

各ロールとエディションをまとめると以下のような表となります。

ロール種別 スターター

エディション

プロフェッショナル

エディション

エンタープライズ

エディション

ベーシック
フル 機能制限あり
ビューワー

 

ユーザーロールとエディションを考慮した使用可能な機能

さらに各エディションとロールを考慮した機能の詳細を見ていきたいと思います。◯はベーシックユーザー、フルユーザーいずれも利用可能、●はベーシックユーザー、フルユーザー間で機能差があることを示しています。

 

項目 詳細項目 ロケーション スターター

エディション

プロフェッショナル

エディション

エンタープライズ

エディション

クラウド基盤 Alteryx Analytics Cloud (AAC) クラウド
データソース接続 標準接続 クラウド
高度な接続 クラウド
Desktop用の接続 オンプレ
ワークフロー作成 Designer Desktop オンプレ
Alteryx Copilot オンプレ
Designer Cloud クラウド
Designer Cloud(Trifacta Classic) クラウド
分析アプリ作成 App Builder クラウド
AIレポート Auto Insights クラウド
オーケストレーション実行 Plans クラウド
スケジュール実行 Schedule クラウド
Cloud Execution for Desktop クラウド
Server オンプレ
AIビルダー Alteryx Intelligence Suite オンプレ オプション オプション
GenAI Tools オンプレ オプション オプション
データパッケージ Business Insights オンプレ オプション オプション
Location Insights オンプレ オプション オプション

 

  • Designer DesktopDesigner Cloudの相互利用

Alteryx Oneでは、ライセンスの管理はAlteryx Analytics Cloud上で一括して行われます。一つのライセンスでDesigner DesktopDesigner Cloudどちらも利用することが可能です。なお、DesktopとCloud間でワークフローの変換は今のところできません。

 

なお、Designer DesktopおよびDesigner Cloudでは利用可能なツールがベーシック・フルで異なります。こちらは別途ドキュメント等ご確認ください(おおよそ使えるツールの観点からは、Designer DesktopのベーシックユーザーはDesigner Cloud相当のツールが使えます)。

 

既存ユーザー様向けの情報

既存ユーザーの方が新プランを利用する場合、Designer Desktopをご利用の方はプロフェッショナルエディション以上をおすすめします。スケジュール実行をご利用の方(既存ユーザーでServerをご利用の方)は、エンタープライズエディションが必要になります。Designer Cloudをご利用の方も、既存のDesigner Cloudのフル機能が使えるのはエンタープライズエディションとなるのでご注意ください(スケジュール実行が使えるのがエンタープライズエディションのみのため)。

 

まとめ

「Alteryx One」というエディション別のライセンス体系は以下のようになっています。

  • エディションはスターター、プロフェッショナル、エンタープライズの3つ
  • エディションによって利用できる機能が異なる
  • 各エディションにはさらにロールという考え方があり、ベーシックユーザー、フルユーザー、ビューワーの3つがある
  • ビューワーは編集権限がなく、作成・編集にはベーシックユーザーもしくはフルユーザーの権限が必要
  • フルユーザーはそのエディションのほぼすべての機能が利用可能な一方、ベーシックユーザーには機能制限がある
  • Designerは、クラウド版、デスクトップ版、どちらも同じライセンスでアクセス可能
  • Designer Desktop/Cloudもベーシックユーザーとフルユーザーで機能差がある
  • オプション製品は、スターター以外のエディションで利用可能

 

参考記事

 

※本記事は2025年5月20日時点の情報です

 

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